翔太また大きな溜息をついた。

「まぁ、いいから乗れ」

「え、でも」

「早くしろ」

「…は、い…」


翔太にせかされ、あたしは乗った。

すると車は空を飛び始めた。


ふと見ると、翔太はいつもと同じ表情で窓の外を見ていた。

その姿にすら、ドキドキと胸は高鳴る。



…何となく分かったかもしれない。

瞬間移動じゃなくて、タクシーを使った理由が。


あたしは、3日前に倒れて、それからまだ体力が完全には戻っていない。

そんな状況で瞬間移動の魔法を使うのは危険だと思ったんだろう。


何で危険か、といいますと…


瞬間移動の魔法は、体力と集中力を伴う。

もし、体力、集中力がおろそかになれば…空間の狭間に身体が留まってしまい、身体は空間の狭間でバラバラになってしまう。

だから、翔太はあたしのことを考えてタクシーを使ってくれたんだと思う。

これが翔太なりの優しさ…


嬉しくてつい、言葉にしてしまった。


「…翔太ありがと」


でも、決して翔太には聞こえないように。

あたしは翔太にも聞こえないくらい小さな声で呟いた。