「…ら…ゆら…由良!」

「ふぇ!なななな何何何!?」


パッと顔を上げると、腰に手を当てた美玲がいた。

心配そうにこちらを見ている。


「ちょっと…
そんなに驚かなくたっていいでしょ?」

「ご、ごめんなさい…」

まだ心臓がばくばくと音を立てている。

あー、ビックリした…


「全く…いくら呼びかけても全然起きないし…」

美玲は溜息を付きながら言った。


「え!?あ、あたし寝てたの!?」

「自分のことなのに知らなかったの?
…爆睡だったわよ」

「いっ今何限目!?」

「…放課後よ。15分前に帰りのホームルームが終わったわ」


パッと外を見ると、オレンジ色に染まる綺麗な空があった。


「あ、あたし何時間寝てたんだろう…」


1限の記憶からないから…朝からずっと寝ていたことになる。


…恐ろしい。

睡魔って恐ろしい。

そんなに疲れていたのだろうか?

うーん…


「それで?何かあったの?」

「へっ?」

思考が止まった。

「今朝、翔太ともめていたじゃない」


翔太、という単語を聞いて胸が苦しくなる。

心臓も痛いくらいに心拍している。


「あぁ…ってもめてないよ?」

「嘘。あんなに感情を露わにした翔太…見たことなかったもの。

何かあったんでしょ?」

「何もないよ」


そうだよ。

あたしが、思い上がってただけ。

ただ、それだけ。