「翔太さーん?」

「……」

「どうしたんですかー?」


すると翔太は足を止め、振り返ってあたしを見た。

怪訝そうな顔をしていると思ったのに、翔太は意外と普通な顔をしていた。


「ど、どうしたの?」

いきなりのことに少し動揺してしまう。

心臓がまた一段と大きな音を立て、全身を巡る。


翔太は口を開け、言葉を発する。

「……俺は、お前が…」


翔太が言うのとほぼ同時に耳をつんざくような女の子の黄色い悲鳴が聞こえる。

あたしは思わず耳を塞ぎ、翔太も喋ることを中断した。


チラっと翔太をみると、かなり怪訝そうな顔をしている。

うわー怖ー!


「ごめん、さっき何て言おうとしたの?聞き取れなかった…」

「…何でもない…急ぐぞ」

「えっ?ちょ、ちょっと⁉︎」

あたしは氷の王子様に引っ張られるまま小走りでついて行くしか術がなかった。




「「「「「キャアアアア‼︎‼︎」」」」」


翔太に掴まれていない方の手で耳を塞ぐ。


周りを見渡すと、女の子達が叫んでいた。

というのは、何かの事件というわけではなく、ただ単に翔太が現れたからなんだけどね。

周りの女の子達は翔太を見て大絶叫している。みんな頬を赤く染めて。


でも、翔太を見ていない女の子達もいたんだ。




女の子達の視線の先には、翔太ではない別の人がいた。