「由良と結婚したらこんなに美味しい朝食が毎日食べられるのね…いいなぁ、由良の旦那様が羨ましい」

美玲はそう言いながら、チラッ、と翔太の方を見た。


「ちょ、ちょっと美玲!?」


自分でも顔が赤くなるのがわかった。


「あはははは」

そんなあたしを見て笑う美玲。


このお方、あたしの気持ちに気付いている上で遊んでますよね!?

からかってますよね!?


「美玲~!」

「はは、冗談よ、冗談」

素敵な笑顔の美玲に、もう、とあたしは笑った。


チラと翔太を盗み見たけど、表情に何の変化も見られない。

もしかして両思いだったりして!?…なんて一瞬でも思った自分がバカみたい。



「由良、あたしと結婚しよう!」

「はあ!?」


美玲の言葉は、翔太のことを考えていたあたしには不意打ちだった。


「だって、毎日こんなに美味しい料理が食べられるなんて幸せだもん」

「あなたの旦那は雅人でしょう?あたしは雅人を敵にしたくはないよ!」

「美玲を由良にはやらねぇよ」

ちょっとムスっとした雅人が口を開いた。

「美玲は俺の嫁だ」

「言わなくてもちゃんと分かってるわよ、旦那様?」


そして笑い合う二人。



このリア充が。


「…他所(よそ)でやってください、他所で」

「……」


あたしと翔太はそれっきり、黙って朝食を終えた。