*由良 side*

あの日…翔太の誕生日から数日が経った。

翔太はというと、普通に過ごしていますよ。

『由良はほんとにバカだ』などと、あたしを侮辱するような言葉をそれは爽やかな王子様スマイルで言ってくるんだよね。

その笑顔にやられる女子は後を絶たない。


相変わらず毒舌は健在だよ。

ほんっとにムカつく…!


だから、翔太の誕生日みたいに、翔太の身体に棲みつくサファイアが、表面に出てくる、ということは起こっていないんだ。


そして今あたしは、"ガーネット"に来ています。

さっき、電話でお父様に呼び出されたんだ。


『急いで来るように』


って言われた。

理由は知らされてないんだ。


緊急の仕事が入ったのかな?

うーん、何だろ?

とりあえず、お父様のところに行こう。



コンコン

「失礼します」

お父様の待つ部屋をノックして入る。


「あぁ、来たか」

「遅くなりました」

「いや、大丈夫だ」


お父様は微かに微笑んだ。

でもそれは、どこか疲れているような、何かを隠しているような、そんな微笑みだった。


お父様は、大丈夫と仰っているけど、お父様の表情からして大丈夫じゃないことは確かだ。

「…何かあったのですか?」

「なぜそう思う?」