スローモーションを見ているかのようだった。


由良は、倒れていった。

包丁が刺さった場所からは血が…


俺は、今、雅人や美玲よりも1番由良の近くにいる。

それなのに、見ていることしかできない。


自分の身体がしたことなのに、止めることすらできなかった。


そのことが悔しい…


『想像以上に簡単だったな』


サファイアが喜んでいることが、すごく伝わってくる。


こいつ…

許さねぇ…!


俺の中で憎悪の感情が膨れ上がっていくのを感じる。



「由良…嘘でしょう…?

…ねぇ、もう起きてよ…… ねぇ……


……由良ああぁっ」


美玲は泣きながら、倒れた由良の傍について、必死に起こそうとしている。

悲痛な叫び声をあげて。


雅人が怒りと悲しみを含んだ目をして「俺」に迫り、「俺」の胸ぐらをつかんだ。


「お前!何やってんだ!」


「俺」はニタっと笑う。