『お前の身体を、借りるぞ……』


全身に痛みが走る。



「どうしたの?逃げろってどういうこと!?」


次の瞬間、俺の身体は、俺の意思に関係なく動きだす。


俺は、ただ、黙って見ていることしかできない。


『…ほう…お前の身体は我によく馴染む』

奴の声が聞こえる。


俺の身体の主導権は、今、完全にサファイアが握っている。

俺はどうすることもできない......


意識を乗っ取られた俺の身体は、由良を見ている。

由良は不安そうな顔をしている。


「ど、どうしたの?目が違うよ…?」


由良、分かってくれ…

これは、俺じゃねぇんだ…


雅人も美玲も、呆然としている。



「翔太…?」

「…………」


「俺」は、ただ由良を見ているだけで、声を発しない。


「どうしたの?気分悪いの?」


違う、違うんだ。

俺の身体は今俺のものではないんだ…!


気づいてくれ…


『無駄だ…神崎由良は気づかない』


奴の声が聞こえる。


そんなことはない。


由良なら…あいつなら、必ず気づいてくれるはずだ。


俺はそれを信じる。