『……神崎由良を殺せ……』


また、聞こえる。

だが、俺にしか聞こえない。

ぼわ、と頭に響く音声。


『"ガーネット"を潰せ…』


由良が編入してくる2週間前からずっと聞こえる声。


由良を殺す?

"ガーネット"を潰す?


あり得ない。

なんでそんなことしなければならないんだ。


"ガーネット"なんて、そう簡単に潰せるはずがないし、潰す気も起らない。

"ガーネット"のご当主…由良の父さんには、今回のことで大変お世話になったしな。


それに、由良には幸せになってほしいし、笑顔を見ていたい。

由良を悲しませるもの、苦しませるもの、辛くさせるもの全て、俺が奪い去ってやる。


由良を守る。


あいつが編入してきた時から、

あいつの笑顔を見た時から、そう決めたんだ。


だから、あいつから笑顔を奪うやつは絶対許さない。


たとえそれがどんな奴だとしても。

それが国王や肉親だとしても。


『神崎由良を殺せ』


誰がするか。


『しぶといやつだ…』


なんだ?

そう思った瞬間、頭に、いや全身に激痛が走る。


『"ガーネット"を潰せ』

痛みがひどくなる。