「由良」

急に翔太から名前を呼ばれる。

「何?」


顔を傾けていると、いきなり前から抱きしめられた。


「え!?ちょ、翔太!?」

「……」

翔太の逞しい腕があたしを包み込む。


あたしは自分の鼓動を感じた。


前に抱きしめられた時より、ちょっと力が強かった。


どうしたんだろう…


あたしも翔太の背中に腕を回すと、更に翔太の力は強くなった。


「翔太……?」


すぐ手の届く距離にいる翔太に呼びかける。

「………あんまり…」

「え…?」

「…あんまり、心配かけるな…」


そう言って更に強い力で抱きしめられる。


その声は決して大きくはなかった。

むしろ、小さすぎて聞き取れないくらいだった。

でもその声には、力がこもっていた。


本当に心配かけちゃったんだね。ごめんね翔太。


「…翔太…苦しい…」


本当に苦しかった。


それは、翔太に強い力で抱きしめられているからだけではなかった。

翔太に心配かけたことに対する罪悪感で心が痛んだというだけではなかった。



あたしの鼓動が異常だったんだ。


いつもよりも鼓動が大きくて、速くて、痛くて…そして苦しかった。