何も考えられないままに、物体が落ちている場所まで来てしまった。



「………」



あたしは、言葉が出てこなかった。


あの物体はやはり、ワイバーンだった。



『由良、ありがとう』


ついさっきまで、優しい目でそう言ってくれた、あのワイバーンの長だった。

黒く焼け焦げて、怪我もひどいけど。



「ワイバーン」



目を瞑って動かないワイバーンに声をかける。



「ねぇ、目を開けてよ。

…ほら…貴方はワイバーンの長なんでしょう…?

皆、貴方を待ってるんだよ…?ねぇ……」


あたしの目から滴が落ちてくる。



「目を開けてよ…」


あたしは膝から崩れ落ちた。



あたしは、また人を救えなかった。


また、誰かを傷つけた。


あたしがもっと強ければ救えたかもしれなかったのに。


そう思えば思うほど、涙が出てきて止まらなかった。