「今日からここに通うことになった、編入生だ」


挨拶を、と担任が編入生に合図する。


「神崎由良(かんざき ゆら)です。よろしくお願いします」


編入生はそれだけ言って、ぺこっとお辞儀した。


「じゃあ、席は…

お、柏木(かしわぎ)のとなりが空いてるな」


げ。

担任と目があったからなんとなく嫌な予感はしていたけれど。


俺の席は一番後ろで、窓側から2列目の席。

一番窓側の席が空いていたんだ。



「じゃあ、そこに座って」

「はい」



編入生は俺の目の前まで来ると


「よろしく」


と笑顔で囁いた。



「あぁ」


俺の返事を待つこともなく、顔色一つ変えることもなく、スッと席について鞄の整理をしだした。