不意に腰を落とし、前傾姿勢で右サイドに切れていく。


俺の前で腰高のままディフェンスをしているのは、左耳に三連ピアスを付けた中肉中背の男。


逆立てた黒い短髪が、一瞬遅れて俺に付いてくる。


はっきり言って、下手な小細工は必要ない。


いや、確かに必要な時も有るけど、ものを言うのは鍛え続けてきた瞬発力有る脚力だ。


それさえ有れば、大抵のディフェンスを一瞬置き去りにする事が出来る。


ただ予想外だったのは、体育館のコートと違って、ゴムソールと床に生じる反発力が無い事。


クイックな動きが出来ない所は、力を余計に加えて凌ぐ。