Street Ball

蟀谷(こめかみ)に血管が浮き上がり、顔は次第に紅潮していく。


ハーフタイムの時に見た、俺を射るような視線。


「人の女に手を出したお前に、端から断る権利なんてねぇんだよ!家に帰してやるだけでも有り難く思え!この糞が!」


そう言い切った後、間髪入れずに右の拳が飛んできた。


頬を捕らえた拳は振り切られ、口の中に鈍い錆びた味が広がる。


ロンが俺一人を呼び出した意味が、やっと分かった。


最初から、其処に付け込む気だったんだ。


「その話し、誰に聞いた?」


碧との関係を知っているのは、俺と碧の二人だけ。


会っている所を、[BUZZ]の兵隊にでも見られたのだろうか。


「誰が教えてくれたのかって?今はそんな事関係ねぇんだよ!」


結果だけを気にするロンには関係なくとも、碧がロンに言ったのかどうかは、俺にとっちゃ重大な問題だ。


しかし、ロンはそれ以上の事は何も喋らず、最後にもう一度八百長話しの念押しをされて、俺は家に帰された。