Street Ball

「三十万で他の二人を納得させろ。ガキには余るぐらいの大金だろ?」


もう俺が頷くと決め込んでいやがる。


絶えず覗かせるにやけ面を見るのも、限界に近付いていた。


「お前達三人の事は調べた。夏目双英十六歳、高校は数ヶ月前に中退。他の二人も同い年。泰二ってのは気紛れそうだが、鉄って体格の良い奴の家は、父親が死んで会社が潰れてから金が無いんだろ?」


確かに、鉄がStreet Ballで稼いだ金を、何かに使ったというのは聞いた事がない。


その代わりに、幼い弟と妹に玩具や靴を買ってやったと、嬉しそうに言っていたのは記憶に有る。


俺と同い年で、鉄は自分の為でも有るが、家族を支える柱になろうとしていた。


そんな鉄の事を考えると、きっぱり断ろうとしていた決意が揺らぐ。


「分かったなら、さっさと二人にこの話しをしてこい。」


それでも、俺が鉄だったらと考えると、仲間に同情されるのは一番嫌う所だ。


「お断りだね。」


今の今まで余裕を見せるにやけ面だったロンの表情が、見る見る内に変わっていく。