Street Ball

普段[SB]に来る通りとは逆の方に歩いていくと、更に荒廃した細道になっていた。


乱雑に建っている建物に邪魔され、月明かりも届いては来ない。


スクエアに区画された細道を、右に左に曲がりながら歩く、ボディーピアスの男に付いていく。


割られた瓶や街灯の破片が散乱し、何度も吹き付けられた色取り取りのグラフティが、外壁いっぱいに広がっている。


使い切ったスプレー缶もそのままの様子を見ると、昼間でも人が活動しているのか疑わしい。


四度目の右角を曲がると、強烈なライトに照らされた。


咄嗟に腕で目を隠す。


それが車のライトだと気付くまで、数秒を要した。


ライトの明かりを弱めるように人が立ったお陰で、瞳に飛び込んでくる光量が押さえられ、どうにか目を開けていられる。


後ろの外壁と同色の影を、ざっと数えてみた。


十数人前後に、俺の背後に数人と、合わせて二十人近くは居るらしい。


奥まった位置に止めた、六十六年製のシボレー・インパラ。


そのボンネットに腰掛け、揃えた人数を誇らしげにしながら腕組みしている男。


言うまでもなく、俺の嫌っているロンだった。