Street Ball

頷きもせずに帰って行った翠の背中を思い出しながら、[SB]の店内に入った。


空調から吹き出される涼しい風が、一瞬で肌に残る汗を乾かせる。


「じゃあね、富さん。」


「ん。」


雑誌から視線を外さないのは何時もの事だけど、ロンに呼び出されていると思うと、富さんの素っ気ない態度も余所余所しく感じる。


ロンだけなら何とかなるとは思うけど、周りに居る兵隊の数を考えると…。


弱気になってるな俺。


そんな気持ちを苦笑いで誤魔化しながら、[SB]を後にする。


店の前で待っていたのは、先程コートに現れたシルバーアクセ満載の男。


左耳に空けたボディーピアスのゲージが大きすぎて、向こう側の景色がはっきり見える。


「逃げなかったみたいだな。ま、此処を押さえてる限り逃げられる筈も無いけどな。こっちだ。」


促されるままに歩き出すと、今まで通りの壁に凭れていた輩達も、俺の後ろを付いてくる。