Street Ball

帰る二人を見送り、揉む手を休めずに辺りを見渡した。


試合の終わりと共に帰り始めたギャラリーの中に、逃がさないよう俺を睨んでいる[BUZZ]の兵隊が数人。


逃げるつもりは毛頭無いけど、逃げ出すような男だと思われている事に向かっ腹が立った。


試合後に溢れ出した汗も、次第に引けていっている。


痙攣が止み始めた脹ら脛も、歩けない程ではない。


そろそろ行こうかと思って腰を上げようとしていると、ゆっくりとドアが開いた。


何も言わず、黙ったまま此方に歩いてくる翠。


そのまま脹ら脛を揉んでいる俺の手を退かし、代わりにマッサージを続けてくれる。


簡易的に作られたDJブースからの曲も終わり、沈黙が続く。


「あのな…。」


脹ら脛をマッサージしてくれる度、緩く巻かれた翠の髪が揺れる。


翠の身体から発せられる優しい香りが、試合後の熱を残す空気に乗って鼻先に届く。


「やっぱり、ケリ付けてから帰るわ。翠は先に帰っててくれ。」