Street Ball

眉間に皺を寄せながら、懸念の色を覗かせている泰二が口を開いた。


心当たりも何も、思い当たる節は碧の事しかない。


あっちもそれ以外に、俺への用事等無いだろう。


「心当たりが無いんなら、俺達も一緒に行くか?」


太い腕を厚い胸板の前で組んでいる鉄が、試合後の興奮覚めやらぬと言った表情で、鼻息を荒くしている。


「いや、呼ばれてるのは俺だけだから、二人は先に帰っててくれ。待ってて貰ったのに悪いな。」


精一杯の笑顔を作ったつもりだったけど、二人を誤魔化し切れただろうか。


「…何か有ったら電話くれよ。俺と鉄は先週と同じクラブに居るから。」


「やっとアキにリベンジ出来る所まで来たんだ!夏目に怪我でもされちゃ堪んないからな。」


無傷で帰れる確率は、あの射るようなロンの視線を思い出す限り、不可能に近いだろうな。


「おぉ!何か有ったら電話するから。じゃ、お疲れさん!」