「来ちゃ悪い?未だ、[HEAT]のマネージャーを辞めたつもりはないけど?」


「…あの…な。」


そう切り出した俺の言葉を、聞きたくないと遮るように、翠の声が重なる。


「格好悪い。言いたい事が有るなら、試合に勝ってからにして。」


言い切ると、あとは何も受け付けないと言った表情で、翠は腕組みしてしまった。


自分でも、都合が良いのは分かっている。


…元居た場所に恵まれていて、その場所が一番安らぐ事を忘れてた。


気付いたとしても、消せない過去が、罪悪感が、一言でも詫びたいと思わせる。


力なくうなだれたまま振り返り、泰二達の元へ歩き出そうとする背中に、絞り出したような翠の声が張り付いた。


「ちゃんと…最後まで見てるから。」


幼なじみだから、翠が側に居る事が当たり前だと思っていた。


近すぎて気付けない、見落としてしまっていた距離。


それが何時しか、無意識の内に心の支えになっていたのだと、澄み切った心が教えてくれた…。