試合に向かう準備を終え、アパートを出る。


この二週間の間、家を出る時に翠の家を見るのが習慣付いてしまった。


ドアの隙間から光が漏れている所を見ると、家には居るらしい。


それを確認し、街灯が所々割られている道を歩き出した。


[SB]の通りに入ると、途端に人数が多くなった。


本戦も準決勝まで来ると、通りからして空気が違う。


高音を巻き散らしながら、1980年代のキャデラックが通り過ぎていく。


ハイドロで下げたバンパーから火花が散り、尾を引いたように伸びる。


それを横目にスピリットに火を付け、宙に煙を泳がせた。


[SB]に近付いていくにつれ、ギャラリーから声をかけられる回数が増える。


勝ち続けて、[HEAT]にも人気が出てきたのだと漸く実感した。