Street Ball

隣で眠っている筈の碧の姿はなく、寝室のドアが微かに開いていた。


カーテンを閉め切った寝室の暗がりを、細長く曙の光が切り取っている。


ベットサイドに下りて、水を飲もうとキッチンへ向かう。


リビングには、薄いカーテン越しに朝日が飛び込んできている。


「…えぇ、そうみたいね。そっちの方は大丈夫だけど、でも…。」


キッチンの陰に隠れ、声を潜めて話していた碧が、驚愕の表情で振り返った。


下ろした右手には、携帯が握られていた。


さり気なく、綺麗なネイルが施された親指で、通話を終了させたのを見逃していない。


「…起きたの?」


「今ね。」


焦りの色を浮かべる碧の横を通り、コップに汲んだ水を飲み干した。


冷たい水に、喉の乾きが満たされていく。