Street Ball

彷徨うようにして着いた、碧のマンション。


肌色に近い色の外壁が、温もりを持っているように見える。


グレーのチャイムを押すと、暫くしてドアの隙間から碧が顔を出した。


「どうかしたの?連絡も無しに来るなんて初めてじゃない。ちょっと待ってね。」


そう言うと、鍵とチェーンを外して、中へ招き入れてくれた。


開かれたドアと同時に、碧を強く抱き締める。


「…翠ちゃんと何かあったの?」


細い首筋から、強いベビードールの匂いがする。


「…いや、碧に会いたかったから来た。」


そう言いながら、自分の心にも言い聞かせた。


実際は、翠が先に帰った事から芽生えた空虚感。


ただそれだけの事なのに、その先に翠との別れが薄ぼんやりと見えた気がした。


本当なら、今こうしなければならないのは翠の方だとも分かってる。


だけど、足は碧のマンションに向かっていたんだ…。