Street Ball

外に戻って翠の携帯を鳴らしてみても、電子的なコールが続くだけで、一向に繋がる気配はなかった。


[SB]のガラス張りの外壁に背を預け、スピリットの穂先を燻す。


立ち上る煙が、哀切を含んでいるように見える。


試合後の興奮で身体が火照っているだけに、心との温度差が明確に感じ取れる。


視界に靄がかかったように霞んでいく。


試合後、誰よりも勝利の喜びを全身で表していた翠…。


俺が一人で居ると、タイミングを見計らったように現れ、横に座る。


何をするでもないが、隣に居てくれるだけで、一人の時より居心地は良かった。


心にポッカリと穴が空き、空虚感の隙間風が傷口を舐めていくようだった。


根本まで吸ったスピリットを、熱の残る地面に押し付け、ガラス張りの外壁から背中を剥がす。


心に生まれた空虚感を埋める為、爪先の赴くままに足を進めていく。