鍵穴に鍵を差し込み、決められた一回転の動作を終える。


ノブを回して最後の確認をしていると、錆びた鉄を叩くような音が近付いてきた。


「あれ?どっか行くの双英?」


声の主が誰かなんて、考える必要も無い。


この世で俺を双栄と呼ぶ人間は、二人しか居ないからだ。


「何か用か?」


肩上から巻かれた髪が、歩く度にバネのように揺れている。


「何か用かって、双英が帰ってきたら見張っててって、美純さんに頼まれたのよ。」


自業自得とは言え、思わず溜め息が漏れる…。