シュート練習には行かず、フェンスを三重に取り囲むギャラリーへ視線を流す。


耳と鼻がピアスで繋がっている男も居れば、明らかに人工色と分かるエクステを付けた女も居る。


その中で、雰囲気の違う女性を見つけるに、さほど時間はかからなかった。


フォークロア調のチュニックに、肌に張り付く七分のデニムを合わせている碧。


試合開始寸前に向け、熱を帯びていく空気の中、一人だけ涼しげにコートを見つめていた。


俺と目が合うと、微笑を送り返してくる。


賭け金の回収を終えた［ＢＵＺＺ］の兵隊が、ＤＪブースへ合図を送った。


ギャラリーが叫声を夜空に響かせる中、一瞬遅れて試合開始のコールが届く。


見つめていたいと思わせる碧から視線を外し、泰二と鉄が待つコートへ向かう。


打ち合わせ無しの試合は、何時もどおり泰二のガードから始まった。