今、碧を追いかければ、何かが変わるのだろうか…。


きっと、面倒な事になるだろうという事は分かる。


そう思って動かない俺は、狡いのかもしれない。


「あれ?そういえば、彼奴が翠ちゃんにちょっかいださないなんて、初めてじゃないか?」


背後から聞こえてきた泰二の声に、自問自答の旅から現実に戻る。


「気紛れだろ?」


横目で見ると、翠も扉の方を見つめていた。


もの悲しそうなその横顔に、針に刺されたような痛みが胸を突く。


「飯でも食って帰ろうぜ。」


無意識で空気の流れを変えてくれた鉄に、心中で感謝した。


「じゃあ、俺達も行くか。」


「あ、ごめん。用事思い出したから私は帰るね。」


そう言って先に帰ってしまった翠の背中を眺め、取り残された俺達も[SB]を後にした。