Street Ball

心臓の高鳴りが聞こえてしまわないかと心配し、少しだけ碧から身体を離した。


だが碧は、髪の毛一本の隙間でも認めないと言いたげで、直ぐに身体を寄せてくる。


どうにか落ち着かせようと、ジンライムを呑み干す。


「でも、どうして俺に番号を?」


「用件なんて初めから無いのよ。ただ夏目君とこうして話してみたかったの。目の前であんなプレーを見せられたら、心動かない方が不思議だと思うけど?」


Street Ballをするようになってから、魅せるプレーを心掛けてはいたけど、勝つ事の方を優先していた。


試合中は必死すぎて、見栄えの良いプレーなんてしたのかどうか、正直自分では覚えちゃいない。


返す言葉が見つけられず、新たに出されたジンライムを口に含んだ。


逃げようと思った前に立ちはだかったのは、度数の高いジンライムの壁。


冷静に思考を巡らせようとしても、熱を帯び始めた脳の動きは、だんだんとスローになっていく。