Street Ball

止まり木に腰掛けた俺に、顔を横向けて何を呑むのかと、無言で聞いてくる。


「ジンライム。」


それを受けて、女性は微かに微笑んだ。


「私はコレと同じものね。」


カウンターの向こうに居たのは、四十前と思われる細身な男性。


オーダーを受けると、別のカクテルグラスを出し、レモンで湿らせた縁に塩を付けた。


カウンターの上に出されたカクテルは、恐らくソルティードック。


直ぐにピムリコと書かれたジンのボトルを出し、男性はジンライムを作った。


「じゃあ、乾杯でもしましょうか?」


未だ名前も知らぬままに交わされた乾杯。


ジンライムを口に含むと、ジンの後を追ってライムの香りが広がっていく。


喉は焼ける程に熱を持ち、鼻腔に抜けていったライムが、その熱を冷ますように喉の内側を愛撫する。