Street Ball

「私が誰かは、電話をかけてきた夏目君の方が知ってるんじゃないかな？貴男が本当に夏目君ならね。」


語尾に含み笑いが込められていた。


俺が電話をかけた方なら、未だ少しは優位に立てたものを…。


電話がかかってきた方は、どうしても受け身の体勢になってしまう。


「そうですね。紙切れをフェンスに差し込んでいったのを見て電話したんですからね。」


これで相手が違うと言えば、あの女性ではない。


午後を越えて、より凶暴な熱を放つ太陽が、容赦無く身体に降り注ぐ。


「やっぱり、私が差し込む所を見てたのね。」


これじゃまるで、俺の方がずっと見ていたみたいだ。


迂闊…と気付いた時には、俺の視線も向こうに届いていたのだと知った。


格好悪いな、俺…。