Street Ball

コールの終わりに息を吐き、再び鳴り始めるコールに、吸い込んだ酸素を体内に留める。


一見規則的なように見えて、動悸は激しさを増していくばかりだった。


身体が持たないと感じたのは、五コール目が鳴り終えた時。


鳴っていたコールが消え、ディスプレイには時計だけが表示されていた。


吐き出した酸素とは、釣り合いがとれない程の酸素を、胸一杯に吸い込んで吐き出す。


肩からフッと力が抜け、緊張していた度合いが伺える。


携帯をポケットに戻し、代わりにスピリットを取り出した。


その中からライターだけ取り出し、着火石を擦って種火を起こす。


一連の動作でガスを送り、点いた火の上に紙切れを翳した。


遙か前方で揺れる陽炎と同じく、幻のような火が紙切れを燃やしていく。


その火でスピリットに火を付けようと、箱の中から一本取り出した時、ポケットの中で携帯が震え始めた。