Street Ball

「この暑いのに精が出るわね。冷たい麦茶でもどうぞ。」


突然開かれた窓と、一緒に聞こえてきた女性の声に、驚いたまま振り返った。


白いブラウスに負けない程の雪肌と、動きと共に靡くロングスカート。


夜に仕事に行くお袋を見続けてきたからか、お袋の化粧が動だと例えるなら、泰二のお袋さんは静だと思える。


「お袋さん、お邪魔してます。と、一緒に麦茶も頂いちゃいます。」


待てを解除された犬のように、お盆に出された麦茶を鉄がかっさらっていった。


「鉄っちゃんは何時見ても元気で良いわね〜。泰二なんて最近は碌に口も聞いてくれないのよ。」


「うるせぇなぁ。」


照れ隠しにそっぽを向いた泰二の姿が、試合の時に見せるクールさとはかけ離れていて、思わず口元が綻んだ。


「ちょっと泰二、母さんに紹介してよ。」


少し困ったように笑うお袋さんは、ごめんなさいねと付け足しそうな表情だった。


「あ、挨拶が遅れてすいません。夏目です。」