Street Ball

近くに居た乗客数人が、突然現れた俺の姿を見て目を丸くした。


だが、そんな事は気にも止めず、向こう側のホームへと渡る。


制服は着て無くとも、他の奴等の反応は変わらないもんだな。


ベンチに腰掛けて待っていると、数分で来た電車へ乗り込んだ。


レールの継ぎ目を拾って揺れる感覚も懐かしい。


座って直ぐの駅で電車を降り、同じように金網をよじ登って改札口をパス。


俺が聞いていた限りだと、泰二の家は通っていた学区からギリギリの為、駅から少し戻らなければならなかった。


駅裏から寂れた商店街を抜け、住宅街へ入った所でポケットからスピリットを取り出す。


手でライターの火を覆いながら、穂先を燻った。


晴天の色が映り、煙が青白く見える。


同じような造りの二階建ての家が並ぶ中、昼を迎えようと静まる住宅街に、どこからかボールを突く音が響いていた。


次いで聞こえてきた鉄の声に、通り過ぎた道を少し戻る。