Street Ball

フェンスを挟んで数メートルしか離れていない筈なのに、久遠の闇を思わせる程、距離は埋まりそうになく感じる。


俺と目が合うと、その場に微笑を残して去っていった。


「夏目、どうしたボーッとして。知り合いでも居たのか?」


泰二に声をかけられるまで、時の流れが止まっていたのかと思う程、エキゾチックな美人だった。


「あ、いや、なんでもない。」


ペットボトルのキャップを閉め、帰り支度をしている時もあの女性が頭から離れない。


アーモンド型を思わせる縁取りの中に、感情の読めない漆黒の瞳。


眉目秀麗という言葉を思い起こさせる。


「二回戦突破おめでとうとお疲れ!」


店内からコートに飛び込んできた翠の声に、脳内に有った画像を消し去った。


何も悪い事はしてないのに、罪悪感が芽生えてしまう。


「夏目の支度も終わったみたいだし、また祝勝会といくか!」