Street Ball

突然現れた巨躯な鉄を前にして、驚いた様子で男は振り返った。


程良く焼けた肌に、白い歯が浮かんでいるように見える優男。


何やら文句を言っているような鉄の声は、ドアを通しては聞こえてこない。


優男はボールを脇に抱え、両手を身体の前に合わせて謝っているよう。


二、三度謝っていたが、ポイッとボールを鉄に渡すと、そのまま身体を前傾姿勢にし、ディフェンスの格好になった。


それを受け、鉄の力強いドリブルだけが聞こえてくる。


構わず得意な右へ切り込んだ鉄の手元に、ボールの姿は無かった。


優男は、鉄からカットしたボールを人差し指の上で回し、翼のように広げた両腕を伝らせる。


最後はうなじの部分でボールの動きを止め、全身の筋肉をボールの動きに変え、鉄へボールを返した。


右へ左へフェイントを仕掛け、最後はボールを巻き込むようにするバックターンで、優男を抜こうとする鉄。