私がそう言うと、山崎は微かに笑って……自分の顔を覆っている黒い布をふわっと取った。
しかし笑ったのは一瞬で、すぐ真顔に戻る。
あれ……でも、この顔どこかで……。
何かを思い出しそうだったけれど、それは、雪が溶けるようにふわっと消えてしまった。
「俺は山崎烝(やまざき すすむ)だ。新撰組監察方をやっている」
「私は……さっきも言ったけど、小松芳乃」
……何でだろう。
いつかは分からないけど、この人に会った事がある気がするんだ。
安心する声。
それに何で……会ったばかりなのに、敬語を外して、こんなに気さくに喋れるの?
考えた分、全て雪のように消えていく。

