そして、台所に向かっている途中だった。 「あ……」 今は、顔をあまり合わせたくない人……山崎が、前から歩いてきていた。 だけど、真っ直ぐ行かないと台所にはたどり着かない。 下を向いて、歩いていく。 目が合ってしまわないように。 でも、ふと顔を上げてしまった時、不意に私と山崎の目が合った。 「……っ」 ……山崎の方から目を逸らし、スッと私の横を通り過ぎて行った。 途端に、また涙が溢れ出てくる。 こんなところで、泣きたくない……。 涙が零れ落ちる前に目を擦り、台所への道を急いだ。