「それに、まだこいつの情報も全く集まっていません。資料が揃った上で尋問をするのが妥当かと思います」
奴がそう言うと、男は少し考えた。
ていうか……奴の名字は、山崎って言うらしい。
助け舟を出してくれた山崎に、私は少し感謝した。
そして、どんな結論を出すのだろうと、男の顔を窺う。
男は山崎の言葉に納得したように頷いた。
「それなら、頼んだ」
「分かりました。……行くぞ」
ぐいっと腕を掴まれ、立ち上がる。
すると……待て、と静止させる声が聞こえた。
振り返ると、さっきまで目を瞑っていた男が、優しい表情で私を見つめていた。

