話を逸らしたくてそう聞くと、美祢さんは少し表情を曇らせる。
「私……?うん、そうね……いたけど、伝えないまま別れちゃった」
「……え?」
「だって、身分が違ったから……伝えられなかったの」
「……」
「私は、農民の娘。相手は武士の家系の男の子だったからね……」
思わず何も言えないでいると、美祢さんは優しく微笑む。
「何暗い顔してるの、芳乃ちゃん。女は度胸、伝えないより伝えた方がいいでしょ?私みたいに、言わないでそのままよりは絶対にいいよ……私なんか、まだ忘れられないんだから」
「え?そうかも、しれませんけど……」
「じゃあ決まり。今日、言ってごらん」
「え……き、今日ですか⁉」

