歩きであっても、馬で追い掛けても、もしも山南さんが朝早くに屯所を出たのなら、大津を過ぎているはずだから到底追いつけない。
みんな……分かっていても、口にはしなかった。
しかし、一人の男が、みんな抑えていた言葉を発する。
「歳……」
「……あぁ。
──脱走だ。これは、局中法度に反する」
それは……隊士であろうが、総長であろうが、例え局長であっても変わりはない。
沖田さんが、連れて帰ってくるかこないか。
それによって、山南さんの運命は決まる。
死に物狂いで山南さんが大津を通り過ぎ、江戸まで逃げ切る事を……みんな、願っていた。

