── ─── ──── 刀の事件から数日経ったある朝。 傷の痛みも、大分収まってきた。 ぐーっと伸びをする。 「……小松」 「ん?何、山崎」 「少し頼みがある」 今日の山崎は、朝から筆を忙しそうに動かしていた。 その手を一旦止めて、私に一冊の書物を手渡す。 「何これ?」 表紙には、達筆な字がみみずのように流れていて、全然読めない。