── ─── ──── 庭に出て、桜の木を見上げる。 あんなに咲いていた桜は、もう散っていた。 代わりに緑の葉が付いていた。 ……何だか、今の自分みたいだ。 桜が散って泣いている。 私の心も泣いている。 木に近付いていき、その立派な幹に手を当てた。 暖かい……。 薄々、気付いていた。 どうしてかは分からないけれど……人の死を見るのが、怖くなってきている事に。 あの時は、目の前で吉田さんが死んだから倒れた。 考えるだけで、幹に触れる手が震えてくる。