── ─── ──── 「何度も聞いてるだろ、さっさと名乗れ」 「……」 嫌だ。 顔は見られても声だけは出さない。 意地でも出すつもりは、ない。 それよりも、今のこの状況をどうにかしてほしい。 手首を縛られ、奴にその腕を引っ張られ。 そして私達は今、家の屋根の上……を、飛んでいる。 屋根から屋根へ。 両腕の自由を奪われている私は、上手くバランスが取れない。 ……どう考えても危ないでしょ! と、言いたい所だけど声を発するのはまっぴらごめんだ。