「いいか、小松。もしもの場合はすぐに離脱しろ」
「え?大丈夫だよー」
山崎が心配そうな声で言ってきた。
私と山崎は忍装束を着た。
もちろん、苦無やこの間買った脇差しも持った。
「お前……どっちが本命なのか、分かってるんだろ?」
「……うん」
池田屋事件──。
これは、歴史にそこまで詳しくない私でも知っている。
それだけ有名な事件なのだ。
しかも私が行くのは、本命の池田屋。
「だけど、教えたら駄目だと思う。さっきも言ったけど、歴史が変わるかもしれないから……」
「……そうか」
準備が整うと、だんだんに緊張してくる。
「よし……っ。じゃあ、行こう」
私達は、祇園会所に向かった──。

