「いいか。前も言ったはずだが、新撰組の密偵である事を敵やそこらの人に知られてはいけない。それなのに名前を教えたら……」 「……ごめんなさい」 「分かったのなら、いい」 それなら、さっきの加代っていうのは山崎が考えた偽名だ。 「……何で、加代にしたの?」 「適当だ」 そうあっさりと答える山崎。 適当……。 山崎らしいな。 「俺も丁度仕事が終わった。帰るぞ」 「あ、うん」 私が返事をすると、山崎は路地裏を抜けていく。