「何かあったらすぐに逃げろ。でかい声で叫べば……まぁ、総司が今日は巡察だから来てくれるはずだ」
逃げるなんてもっての他だ。
助けも、いらない。
「それから、お前は今日は休みだ。山崎にも言ってある。朝餉食ったら行け」
「えっ、休んでいいんですか?」
「あぁ。その代わり、明日からはたんまり働いてもらうからよ」
土方さんはそう言うと、今度は意地悪っぽい笑みを浮かべた。
その表情に私も笑ってしまう。
「はい、分かりました」
何だか、土方さんの印象が変わったような気がした。
……きっと、根が優しいんだ。
広間に向かう土方さんの背中を、追い掛けたのだった。

