俺と愛羅はガキからの付き合いなうえに、家が隣で親同士もかなり仲がいい。

だから愛羅が隣にいるのはごく自然な感じだから、愛羅に恋愛感情なんてものを感じた事もない。

確かに愛羅は悠真が言うようにキレイに可愛くなった。

だからって… 俺と愛羅が?
あるわけない………

チクッとほんとに小さな痛みらしき物を感じたが、なんの意味があるかわからない。

「 ブス羅に彼氏できたらどうする?淳の事ほったらかして離れてくんだろうな 」

チクッ。

また小さな痛み。

悠真が話すなか考えながら歩いていると、ゲーセン前の入り口で朝に会ったサッカー部奴と、その仲間がつるんでいた。

「 悠真、アイツ… サッカー部さ、誰だっけ?」

「 サッカー部の… ああ、坂原だよ。」

坂原… そうだ、思い出した。
あ、こっち見た…

よう!と気安く俺と悠真を見て呼び止めた。なんだか嫌な感じだ。

俺は無視して通り過ぎようとした時、何が気に入らないのか悠真の足を引っかけてつまづかせた。

「 おいっ、坂原!危ねぇだろ!」

「 お前が無視すっからだろ?朝といいなんか腹が立つんだよっ」

愛羅にフラれたからって逆ギレか?

「 愛羅にキスできなかったのが悔しいのか?かわいそうだな?」

坂原の顔に怒りが見えた。
俺につかみかかる坂原が、右拳を振り上げた時だった。

「 淳利を離してっ!」

その声に俺も坂原も回りにいた奴らはみんな 振り返った。

「 あ、愛っ…… っ!!」

愛羅だと、しっかり視界に入った時には、俺の襟首をつかんでいた坂原の手首を捻りあげていた。


は…… 嘘だろ? 愛羅お前… 坂原に何したんだよ、なんだ今のは!?

「 いっ…つ、 また、この女!」

痛がりながら地面に横たわり、文句を言う坂原。

俺は思い出した。

愛羅が、唯一習い事を続けているもの。

「 空手… まだやってたのか?」

ニッコリ笑い、ピースして見せる愛羅。

朝、坂原が腰を押さえていたのを思い出して合点がいった。

坂原が愛羅にキスしようとして、逆にやられたんだと。