勢いよく起き上がり、細い首にそっと触れる。跡は消えつつあるが、まだ少し赤みは残っていた。ラインアーサは性急にスズランを抱きしめ、胸に耳を押しあてて心音を確かめる。

「きゃ…! ラ、ライア? どうしたの?」

「……ちゃんと聞こえる。心臓の音がする。体も温かい…。良かった、本当に…。もしかしてずっとこうやって俺の傍に?」

「…っ! 心配かけてごめんなさい。わたし…、ライアのそばにいたくて」

「ありがとう。俺もだいぶ回復したよ……そうだ! ハリは? それに先生や皆は…」

「ハリさんは自分の部屋に戻るって。目が覚めた時に先生たちも付き添って行ったみたい…。わたしが目を覚ましたのはその後で…」

「そうか。大丈夫だろうか」

 ハリに何が起きたのかは分からない。しかし、彼がどんな性分であろうとラインアーサにとっては些細な事だ。何か他にやりたい事があるならこの国に留まる必要は無い。ハリの自由だと思っている。

「ライア…。わたしハリさんの事、、その、許嫁だったなんて知らなくて……本当に覚えてなかったの。だから…」

 抱き寄せたままのスズランから不安が痛い程に伝わってくる。ラインアーサも同様の気持ちだった。

「……スズラン。少し気分転換しようか」

「気分転換?」

「うん。いい場所があるんだ、行こう」