なんだか気分がいい。
とても良い香りがする。
胸が弾む様な。
大好きだった場所を思い出す……あの日以来、一度も行ってない、むしろ避けていた場所。
お気に入りの木の下で大切な人と過ごせたら。
勇気を出して誘い出してみようかな……。
甘くて、ひどく切ない───
でも大好きな香り。
──────・・・
「……ん…」
ふと目が覚めた。
朝が来たのかと思ったが見渡すと部屋は薄暗く、窓から差し込む月明かりが時刻は夜だと告げている。自室の物ではない天井や家具。起き抜けで回らない頭を必死に回転させた結果、あのまま医務室の寝台で寝てしまったという事に思い当たる。
「……え。俺、寝てたのか!?」
急いで身を起こそうとすると右手を強く握られる。
「ライア! 目が覚めたんだね、良かった…!」
「スズラン!」
スズランの手が自身のそれと繋がれていた。ずっと握って居てくれたのか、お互いの体温を共有している。
「ライア…、起きて大丈夫?」
心配そうな瞳を向けられるが、その言葉をそっくりそのまま返したい。
「っ…スズランこそ、もう大丈夫なのか?」
「わたしならもう平気だよ! 先生たちがとても良くしてくれて… 」
「っ…首は!? 体調は?」