「えっと、今日はいつもより早いね」

「少しでも多くスズランと一緒にいたくて早めに終わらせたんだ。……駄目だった?」

「そ、そんな事ないけど。あの……ライア、そろそろ離して…」

 腕の中で恥ずかしそうに身動ぎするスズランが可愛くて少し意地悪をしたくなる。

「どうして?」

「どうしてって…。ええっと、その、セィシェルが来ちゃう」

「あいつに見られたら駄目? 俺、実はこの後すぐに仕事があって今日は店に寄って行けないんだ。だからもう少しだけ」

「え!? もう帰っちゃうの?」

「そう、残念だけどこの後夜遅くまで外せない公務が入ってるんだ」

 そう告げると今度はあからさまにしょんぼりと寂しそうに俯く。

「そうなの……」

「そんなにがっかりされると離れがたいんだけど」

「だって、もう帰っちゃうなんて」

「スズラン…」

 落ち込む姿さえも可愛らしい。堪らず首筋に唇を落とす。

「っひゃ!!」

「本当はもっと一緒に居たい」

「わたしも、もっとライアと一緒にいたい」

「ああ、もう。そんなのますます離れがたくなるだろ」

 互いの素直な想いが伝わる。

「…っ」

「スズラン…?」

「……ライア」

「ん?」