耳を突く怒声で唐突に話が遮られる。この話題になると必ずと言って良いほどセィシェルが割り込んでくるのだ。

「セィシェル。お前の気持ちも分かるがこれはスズの問題だ。それにアーサ様に無礼を働くんじゃあないとあれほど言っているだろう?」

「ふん。何が王子だよ…! あんたちっとも王子らしくないからとんだ拍子抜けだぜ」

「はは、良く言われるよ。じゃあ俺はスズランの傍に戻るよ」

「お願いします、アーサ様」

「ちっ! ロリコン変態王子め」

 去り際に悪態を吐かれたが、敢えて聞こえなかった事にした。しかしユージーンの拳骨がセィシェルの頭に落ちた音ははっきりと聞こえたのだった。
 貯蔵庫で食材の確認をしているスズランを見つける。帳簿とにらめっこしながら各食材の数量を確認している小さな背中にそっと近づき、そのまま静かに抱きしめた。

「っひゃぁあ!? ラ、ライア!! びっくりした……。あっ、どこまで数えてたのかわからなくなっちゃった」

「ん? それ、もう確認終わったから大丈夫だと思うよ」

 耳元で囁くとスズランは頬を紅潮させた。

「そ、そうなの? じゃあ裏庭の片付け…」

「それももう終わらせた」

「お洗濯の取り入れ…」

「終わってる」